「椅子を引く」とは?押す動作も含まれる?

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日本人であるなら、日本語が正しく話せて当然と思われがちです。

 

とはいえ、時に同じ日本人同士の間でも、特定の用語に関する意味の取り違いや、発言の理解に苦しむという現象が起きます。

椅子を引くのか押すのか

例えば、椅子を引くというシンプルな動作一つでも、混乱が生じることがあります。

 

学校で先生が生徒に対して「席を離れるなら、椅子を引いておくように」と指示するのを聞いたことがあるでしょう。

 

この指示の意味は、椅子を机の下に収めておくようにというものです。

 

椅子がきちんとしまわれていないことで、他の生徒がつまづくなど、通行の邪魔になる可能性があるからです。

 

ところが、この「引く」という言葉が誤解を招くことがあります。

 

中には、「引く」という表現から、格納されている椅子を引き出すという意味に解釈してしまう場合があるのです。

 

例えば、レストランで店員さんが、お客さんが座りやすいように椅子を引いてくれることがあります。

 

この場合、引くというのはテーブルの下から出すということになります。

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先程の先生の表現とは逆の動作です。

 

そのため、椅子を机の下に収めるのであれば、「押す」の方が正しいと考える人もいます。

 

確かに、収納の動作としては「押す」のであって、自分の方に「引き出す」訳ではありません。

動かすという慣用表現

では、先程の先生が生徒に出した指示の意味からすると、「引く」という表現は正しいのでしょうか。

 

「引く」という動作は、「動かす」ことを表す慣用表現です。

 

どの方向に動かすとしても、「引く」と表現することができます。

 

ですから、先生が生徒に出した先程の指示で使用した「椅子を引く」という表現は正しいということになります。

 

一般的に、「引く」とは自分がいる方向に向けて動かすという意味があるので、違和感があるかもしれませんが、慣用表現としては正しい表現なのです。

 

慣用表現に慣れていない子供たちが先生の指示を理解するのは難しいかもしれませんが、先生や周りの大人が日常的に使用しているうちに、どのような行動が求められているかを理解できるようになります。

 

ただし、最初は子供が理解できるように、「椅子を戻す」というような説明を加えてあげるのが親切でしょう。

 

似たような慣用表現には、「火を落とす」があります。

 

文字通りに捉えると意味がわかりませんが、慣用表現として「火力を弱める」「火を消す」動作を指して用いられます。

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