電車の車両に設置されているトイレは汲み取り式?家庭用の汲み取り式との違いとは
現代、電車の路線の整備が整っていることにより、電車を利用した長距離移動が可能となっています。
そこで問題になってくるのがトイレです。
新幹線のように移動距離が長い電車であれば、車両用のトイレが設置されています。
電車に設置されているトイレは一般的に普及している家庭の水洗式と異なり、汲み取り式が採用されており、独自の方法で巧みに衛生管理を行っています。
そもそも汲み取り式トイレってなに?
近年、ほとんどの家庭では洋式の水洗トイレが主流となっており、汲み取り式トイレを見かける機会は随分減ってきています。
そのため、汲み取り式トイレのことを知らない世代も出てきていると言えるでしょう。
水洗式トイレが流水の力で汚物を浄化槽や下水道に流して処理する構造であるのに対し、汲み取り式トイレは汚物をタンクに貯蔵し、定期的に汲み取ることで処理しています。
この作業方法が名前の由来となっており、タンクに汚物がぼっとんと落ちることから「ぼっとん便所」とも呼ばれています。
貯蔵した汚物の汲み取り作業は、現在バキュームカーによる吸引方法が主流ですが、昔はバケツなどを使用して手作業で行っていました。
一定の期間、汚物を溜め続けなければいけないため、定期的に消毒液を流し入れるなどの手間がかかるという難点があります。
初期の電車用のトイレは垂れ流しだった!?
日本で初めて鉄道が開通したのは1872年の明治初期で、この頃の電車にはトイレの設置はなく、途中で停車する駅で用を足す必要がありました。
電車の車両用トイレが初めて登場したのは1889年で、路線の延長を契機に設置される運びとなりました。
初期の電車用のトイレは、汲み取り式トイレのタンクがついてない開放式というもので、用を足した後の汚物はそのまま線路の上に垂れ流すという方法が取られていました。
この処理方法は自然の浄化作用に依存したものであり、衛生面で数々の問題が発生し、沿線に住んでいる住人から多数の苦情が寄せられました。
そこで開発されたのが、粉砕式という方法です。
この方法は汚物に薬品を混ぜることで殺菌と脱臭を行い、回転羽根で汚物を泥上に粉砕するという構造になっていましたが、最終的には線路に流すことに変わりはなく、問題は解決しませんでした。
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衛生的に問題だらけである、汚物の垂れ流し方式を改善するために開発された処理方法が、循環式とカセット式というものです。
この時点でようやく、汚物をタンクに溜めるという汲み取り式の方法が取られるようになりました。
家庭用の汲み取り式と大きく異なる点は、便器を洗浄するために洗浄水を使用するという点です。
循環式とは、タンクに貯蓄した洗浄水にあらかじめ消毒液や消臭剤を混ぜておき、用を足した後、その洗浄水をポンプによって汲み上げ、便器を洗浄する方法です。
洗浄後の汚物はフィルターによって濾過され、再度その洗浄水を再利用することができるようになっています。
汚物用のタンクに7割程洗浄水を用意しておけば、汚物を2、3日分は貯蔵できるようになっています。
カセット式は汚物のみを溜めておくカセットと、汚物と分離された汚水を貯留して消毒する消毒槽で構成されています。
循環式と異なり、汚物と浄化水のタンクが分かれているため、汲み取りの際に汚物のみを取り除けばよく、汲み取り専用の地上設備が循環式よりも簡素にできるというメリットがあります。
この2種類の汚物の処理方法が登場したことにより、電車の線路に垂れ流すという問題は解決されました。
しかし、消毒されているとはいえ、同じ洗浄水を何度も繰り返すため、段々と洗浄水が汚れていき、悪臭が発生するという新たな問題が発生しました。
進化し続ける電車用トイレ
悪臭の問題を解決し、快適で清潔な空間づくりとして開発されたのが、真空式という処理方法です。
この方法は循環式を発展させたもので、排水管を真空することによって汚物をタンクに吸引するという仕組みになっています。
水の力によって汚物を流すのではなく、真空の吸引力によって汚物をタンクに直接落とすため、便器を洗浄する洗浄水を節約することができます。
そして、1度に使用する浄化水の量が少なくなることにより、きれいな浄化水を長期的に使用することが可能となり、悪臭の発生を最低限にすることができるようになりました。
このように、電車に設置されている現在の汲み取り式トイレは水洗トイレに近い構造となっており、便器の洗浄処理に洗浄水を用い、自動化され、衛生面にも気を配った構造となっています。
溜まった汚物の処理方法は、家庭用の汲み取り式と同様に、車両基地にてバキュームカーや専用の地上施設で処理されています。
処理方法が似ているにも関わらず、家庭用よりも電車に設置されている汲み取り式の方が衛生的なのは、タンクなどの汚物の処理構造に使用されている技術力が桁違いだからと言えるでしょう。
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